耐震性能【耐震等級3】と【許容応力度計算】は必須
●過去から学ぶ、【耐震等級3】の必要性
2016年に起きた熊本地震。震度7の地震動に2度見舞われたことで多くの建物が被害を受け、人命を奪いました。
有識者による建物被害調査から、現行の耐震基準を満たす(耐震等級1)程度では8割の住宅で損傷が起きていること、
その一方で、耐震等級3の住宅では9割近い建物が無被害だったことが、(上記の表より)読み取れます。
損傷した家を出て避難生活を余儀なくされた方の中には、ご高齢の方を中心に体調を崩される人も多く見受けられました。
災害後も、今まで暮らしてきた家へそのまま安全に住み続けられることは、命を守ることに直結します。
今後30年間に70%の確率で首都直下地震が想定される今、災害に強い住宅であるか否かは大きなテーマとなっています。
この熊本地震をきっかけに、taruShiruは【耐震等級3の確保】は設計者としての責務だと強く感じました。
翌年に「構造塾」の勉強会へ通い、木造2階建ての住宅でも【許容応力度計算】をすべきだと確信を深めました。
木造住宅に携わり20数年経ちますが、繰り返し学ぶ程に奥はより深く、今も学びを続けています。
プラン初期段階から、許容応力度計算(使用ソフト:ホームズ君)を並行して設計を進めていきます。
耐震等級3=プランの制約になる、という認識は全く逆です。安全が確認できるからこそ、自信を持ったご提案ができます。
建物の安全性を軽視した結果としてプランが自由になるなら、それは自由ではなくて無責任では?と思います。
●なぜ、【許容応力度計算】まで行うのか
木造住宅の構造安全性の確認方法は、「壁量計算」と言われる簡易法によるもの、品確法に基づく「性能表示計算」によるもの、
そして「許容応力度計算」があります。このうち法令上、【構造計算】という文言が使われているのは許容応力計算のみです。
「性能表示計算で耐震等級3の住宅」と「許容応力度計算で耐震等級3の住宅」は、同じ耐震性能ではありません。
あまり知られていませんが、「性能表示計算で耐震等級3の住宅」を許容応力度計算すると、耐震等級2程度の壁量しかありません。
また、柱や梁1本1本にかかる荷重や応力を解析するのは許容応力度計算のみで、梁のたわみなど長期的な性能も検討しています。
必要に応じてより詳しい専門家の力も借りながら、より安全を高めた設計を行っていきます。
そして、構造材には主に埼玉県産材(県内で建てる場合)を中心とした無垢材を使用します。
許容応力度計算を用いて適切な構造設計をすれば、ほぼ近くの山の木で、耐震等級3の家が十分に建てられます。
地域の山の木を循環させることは、山を守ることに繋がります。材料の運搬にかかるエネルギー、環境負荷も意識した家づくりです。
地震や暴風に抵抗する耐力壁については、外周壁面にできる限り筋交いは用いず、耐力面材で包んでいきます。
熊本地震後の専門家調査からも、耐力壁を筋交いだけで構成した建物に比べ、面材使用の建物は損傷が少ないことが指摘されています。
筋交いを用いないことは、断熱・気密性能の向上の点からも有利に働きます。付加断熱を行うとしても、やはり熱橋は減らしたい。
そして地盤調査については、一般的なSWS試験に加えて土質のサンプリングも行い、精度を高めた上でデータ解析します。
調査によって得られた地盤の強さは、その後の許容応力度計算に反映されます。地盤の検討方法も、安全性に差が出るポイント。
「大切な人の命を守る家」であることは、何よりも優先すべきこと。「穏やかでワクワクする暮らし」のための、前提条件です。